眠れる森のビヨ
演劇女子部 BEYOOOOONDS 主演舞台
「眠れる森のビヨ」
鑑賞してきました(4月17日 14:30~公演)
前作アラビヨーンズナイトに魅了され見に行くことを決めましたが、前作を遙かに超える素晴らしい舞台でした。
今回はその感想を綴って行きたいと思います……
(千秋楽後の投稿ですのでかなりネタバレします。読む際は必ず演劇を見た後でお願いします。)
あらすじ
演劇部のヒカルは全国大会を目指し、仲間とともに今日も稽古に励む。
時々喧嘩もするけれど、最高の作品を目指して、僕たちは本気で青春する!
僕たちは今を生きてる・・!
(眠れる森のビヨ | 演劇女子部)より抜粋
もう少し詳しいあらすじ
崋山高校演劇部に所属するヒカル。先輩たちが成し遂げられなかった悲願の全国大会出場に向けて、物語を決めるミーティングを行うも大論争に。ツムギの提案により「眠れる森の美女」のオマージュを執筆をすることになったヒカル。部内衝突や納得のいく独自の結末も書き終え、何とか完成した崋山高校流「眠れる森の美女」。その結末とは、「オーロラ姫が王子のキスで目覚めた後も、楽しかった夢の世界へ再び戻り永遠の眠りについてしまう。」というものだった…
ストーリーを全部書いてもブログとして何も面白みがないため、ここまでにします。
○考察○
自分で振り返って思うのは、ヒカルに対するツムギの執着やつながりみたいなものがかなり大きいのではないか、ということです。
・劇中でヒカル以外に、唯一ヒマリと会話があったこと
・「眠れる森の美女」をやろうと提案した張本人であること
・ブロック大会直前に皆の絆を高めより有意義だったと思えるイベントとしてセットや衣装を(修復可能な範囲で)破壊したこと
・「この時間がずっと続けば良いのに」という旨のセリフが多いこと
・ヒカルにだけは引っ越しのことを伝えたこと
とヒカルが現実での事故から五年間の眠り(夢)の中で、ヒカルを夢の世界に留めるために、現実でのことを夢の中でいわば、「再演」しているのではないか、と思いました。
僕は、ヒカルが所属していた演劇部に事故が発生するまでの現実での出来事と、夢の中での出来事にはかなり相違があるのではないか、とも思います。
考えてみれば、現実でツムギが「皆ともっと過ごしたい!絆深めたい!この時間が続いて欲しい!」という気持ちからセットと衣装をズタズタにしてたら結構ヤバイ恋の刃なのでは…?っていう。
現実ではセット破壊は行われていないが、”夢の世界へヒカルを留めるために”、夢の中のツムギが独自に行った行為なのでは?とも考えられると思います。
そうすると、なにかと「黒幕」感の強いツムギに納得がいきました。
実は現実では「眠れる森の美女」ですらなかったのでは!?とも思ってしまいます。
ここまでストーリーからの考察ですが、実際に鑑賞したときに気づいたポイントも考察の根拠(?)になっています。
教室でヒカルが執筆をするシーン。現れたヒマリと言い争いになり、ヒカルは倒れてしまいます。そこへ駆けつけていた夢子・ネネ、そしてツムギ。夢子とネネは一目散に駆け寄りますが、ツムギは立ち尽くしたまま。
ここにかなり違和感がありました。ツムギにとってヒカルは、歌とダンスの特訓に一番に助けてくれた存在であるのに、そのヒカルの苦しむ側にかけよらないハズがナカッターのです(ふざけましたすいません)。
じゃあツムギは何をしていたのか?
夢子とネネには見えていない、ツムギにも見えていないであろうヒマリを「余計な邪魔をするな」といわんばかりに睨み付けていたのです。
こういった、フォーカスの当たりにくい(このシーンでみるべきはヒカルであるから)細かな場面場面での演技さえも伏線になっていました。
見れば見るほど奥の深く、新しい気づきがあるのではないかと感じました。
ここで小休憩
余談ですが、このブログは僕自身の備忘録的役割も兼ねているので、この後も遠慮無しの長文になると思われますがご了承ください……
あと普段は見出しもなんとなく凝るのですが、内容に力を入れすぎたので大分手抜きです…笑
ここからは演劇全体の感想、その後にキャストに視点を当てた感想の順で綴っていきたいと思います。
舞台を見た率直な感想
「とにかく泣ける」と心から感じました。ヒカルがかけがえのない演劇部の仲間と過ごした最高で夢のような幻想と、残酷な事故と仲間の死という絶望とそれでも待っていてくれたヒマリという演劇部の仲間と同じくらいかけがえのない存在がいる真実の現実。
このどちらを選ぶのか、どちらを選べば良いのか、どっちを選んでも後悔の残る究極の選択を迫られるヒカルの姿、これまでの演劇部との楽しい日々を見せられた後のクライマックスは、楽しさと絶望が互いに強調し合い、涙腺を揺るがされました。
なんどもいいたいことは、演劇部との日々は本当に幸せだったということです。音痴でダンスの苦手なツムギと手伝ってくれた夢子・ネネと一緒に特訓した日々、ノゾミ・カナエ・タマエたちと言い争いになりながらも全国大会に向けて頑張った日々、優しく面倒を見てくれた山上部長と浜田先輩、協力してセットを修復したショーコとユッコ、全てが”夢の中の幻想だったとしても”、幸せで、大切だったからこその究極の選択でした。
ヒマリの言う「(オーロラ姫が再び眠りについた結末なんて)私嫌いだよ」は、現実で待っている側からしたら至極当然、正解、夢の世界は間違い、のはずなのに、正解が不正解に不正界外正解に、もはや何が正解で不正解なんて存在しないと思考が追い込まれる怒濤のラストが圧巻でした。
考察で述べたのですが、カメラに抜かれないであろう(ぜひ抜いて欲しい!)場面での細かな演技には鳥肌が経ちました。
内容に深くは関わりませんが、ブロック大会に向かうバスのシーンではネネと浜田先輩が隣同士でいちゃついていて、「もしかして付き合ってる?」ということや、夢子とノゾミが隣同士だったり、夢子がノゾミを説得する場面があることもあり、カナエ・タマエ以外の数少ない理解者なのかな?といった色んな想像が、カメラ外の演技から感じ取ることができました。
今回の舞台でのそういう姿勢と、普段のライブパフォーマンスでの表情をさぼらない100%の姿勢が互いに活かされているのだと感じます。BEYOOOOONDSが舞台をやるのは、「寸劇をやっててそういうお仕事もまぁこなせるから」ではなく、ライブや舞台に立つ上での全力の姿勢こそが「アイドル」であるBEYOOOOONDSが舞台に立つ意義であると思います。(舞台とライブでお互いに還元できる物がないとただの負担でしかないし、意味が無いと思っています)
なのでぜひ二回目以降は、特定の役に注目したり、全体を意識して見たりと、色んな見方で舞台をより楽しみたいと思いました。
また、今回の舞台では(散々上でBEYOOOOONDSっていってるけど)BEYOOOOONDSではなく、登場人物その存在が立っていたと深く感じました。
そのことをブログに記していた西田汐里ちゃんはもちろん、他メンバー(もブログにかいてたかも)もそのことはかなり感じていると思います。
それほどの役への入り込み、作り込み、こだわりが為せる技だったのだなと感じました。演劇中の崋山高校の演劇シーンではそこまで感じなかった(王子役のヒカルがいるな、という感覚)ので余計に実感しました。
今回舞台を見た後、内容のダークさに圧倒されてかなり飲まれてしまいました。具体的に言うと、BEYOOOOONDSの楽しい姿をみても、舞台で感じた絶望が頭に残っていて、いうなれば崋山高校演劇部とBEYOOOOONDSを見る目がごちゃまぜになった状態でした。
ですが、上で書いたように、舞台中はBEYOOOOONDSを見ている感覚はなかったことを再認識したとき、別にBEYOOOOONDSを見て悲しい気持ちを思い出す必要はないんだ、と安心したら、よりBEYOOOOONDSが好きになっていました。
もし舞台の後からそういう気持ちになっている人がいたら、気づいて欲しいなと思います。
また、ここまで飲まれたのも舞台の素晴らしさ故であることも覚えておきたいですね。
まぁ、みんなが衣装を着た集合写真は穏やかな気持ちで見られないんですけどね。
小休憩2
さて、この後は各キャストについてです。相対的に感想が少なくなってしまう子もいると思いますが、全体としてみていてとてもよかった、心動かされたというのが一番ですのでご容赦ください……(1回で皆を見尽くすのは難しい…)
各キャストについて
ヒカル:なんといっても主人公。普段の平井美葉てゃ全くの別人で、喜怒哀楽、特に「哀」の表現が鍵になる中で、なんとも表現しがたい複雑な思いの絡み合った絶妙の表情がかなり印象に残っています。
今回5列目で鑑賞できたことで表情をはっきりと見ることができたのは贅沢でとてもよかったです。
また親しみやすく絡みやすい優しいヒカルがすごくかっこよかったです。
山上部長のように背が高いわけでも、浜田先輩のようなイケメン感が強調されているわけでもないが、すごく好きになる人物だと思いました。
夢子・ネネ:夢子は、きっと誰もが彼女を好きになってしまう、天然小悪魔感さえも感じました。優しさがただあるわけではなく、気難しいノゾミを説得してしまうほどの論理的で賢いところ、みんなのことを良く見ているところなどなど…とにかくかわいかったです。ネネは気が強い所もあるけど、ツムギの特訓にピアノで手助けしたり、差し入れを持ってきてくれてすごく優しい子だと感じました。ピアノを弾くときの「ど・う・ぞ」がめちゃめちゃかわいかったです。
山上部長・浜田先輩:今回どの男役も、自然にかっこいいと思える顔立ちと立ち振る舞いだったのが本当にすごいと感じます。特に面白いのは、舞台にいる山上部長は頼りがいのあるかっこいい山上部長なのに、江口紗耶ちゃんのブログに上がった山上部長の衣装を着た江口紗耶ちゃんのオフショット自撮りはめちゃめちゃかわいくて、ほとんど別人に感じました。是非見比べてください。
ショーコ・ユッコ:あふれ出る後輩感がすごく、かわいがりたくなるような愛嬌を感じました。ユッコの歌声の伸びはすさまじいものでしたし、二人の楽しそうな姿はみていて笑顔になりました。
(役とは関係ないですが、桃々姫の元気な姿を見ることができて嬉しかった…!!!)
ノゾミ・カナエ・タマエ:この3人はキャラがかなり立っていて、秀逸でした…ノゾミは気難しいですが、別にカナエ・タマエを従えてるわけではなく、カナエ・タマエもノゾミのことを理解しているからこそ一緒にいるという3人の関係性がすごくよかったからこその「3人衆」感が出ていたと感じます。特にタマエはめちゃめちゃ好きですね…軽やかでノリノリで跳ねてる感じがすごくかわいらしかったです。
ツムギ:前作とは一転したおとなしめの男の子で、手助けしてあげたくなる健気さを感じました。ツムギが黒幕なのではないか、というのに気づいたのもヒマリとのワンシーンということもあり、ツムギに注目して見るのもかなり発見がありそうだと感じました。おとなしさを演じつつも、細部では裏の顔も見せるその作り込みに感服です。
ヒマリ:少ない登場シーンでどれだけ魅せられるかと難しい役だったと思いますが、めちゃめちゃ良かったと思います。序盤の理想の幼なじみで、夢子にヒカルは渡さないぞと言わんばかりの正ヒロイン感、後半にかけて増す不気味さと、ヒカルへの焦りと必死さ…現実に戻り、ヒカルとベンチで話した後分かれるシーンの「また、明日ね......!!!」の不安からのセリフにグッときました。
眠れる森のビヨ
今回の演劇女子部「眠れる森のビヨ」見に行くことができて本当に良かったです。
舞台を通じて「アイドル」であるBEYOOOOONDSが演劇を行うことの意義の発見、BEYOOOOONDSにしかできない演劇、そして何よりも純粋に舞台の内容に心を揺さぶられました。
本当に素晴らしい舞台を見ることができて幸せです。
夢の幻想か、絶望の現実か、ヒカルにとってどちらが正しかったかはわからないですが、BEYOOOOONDSが魅せてくれるような前作からの成長・飛躍・”Beyond”は過去への執着からは得られない、今に生き、未来を目指すことで初めて得られる幸せなのではないでしょうか。
これが、ヒマリが「辛」に一筆を足すことで証明してくれた真実です。